海上職・自社養成船員

2023年01月20日

海上職・自社養成船員




yousei 10.jpg
   航海士当直勤務



 最近は「船乗り」という言葉は使われなくなり「海上職」というようになったのか。MOL・商船三井での最近の募集要項は下記のようです。

   採用条件

 1. 三級海技士以上の資格による外航船乗船履歴を有する者。
 2. 原則として、二級海技士免状及保有及び一級海技士(筆記)免状合格、もしくは一級海技士免状保有者。
 3. 原則として、三級海技士(電子通信)、第三級海上無線通信士免状、またはこれらの上位免状取得者(但し、航海士に限る)
 4. 連続半年以上の乗船勤務に耐えうる心身ともに健康な状態の者、および東京その他(海外を含む)での陸上勤務可能な者。
 5. 短期大学(高専含む)以上の学歴を有する者。
 6. TOIECにて600点以上を取得している者

 飛行機のパイロットのように自社養成コ-スがある。昔のように商船・水産系の大学・高専の出身で無くても士官となることは可能となった。 一般大学卒において、文系であっても女性でも海上職に採用されれば、航海士・機関士になることができる。 日本の大手の海運会社、日本郵船商船三井川崎汽船がこの制度をとっている。 日本郵船の採用数は、今年度に海技者22人、航海士12人(うち自社養成コース6人)です。商船三井海上新卒採用20名となります。

 商船三井の採用では上の要綱によると、逆に商船系大学・高専の新卒では三級海技士免状を所有していても、それだけでは乗船履歴が無く、どこかで経験を得なければ採用条件を満たさない。専門学校の新卒採用を拒否しているようにも思われる。 大手の採用の意図は今までの「船乗り」を欲しているのではなく、陸上職へ使うのにベ-スとなる経験を得させようとの目論見でしょう。 自社船に日本人船員が必要と考えているのでは無いと思われる。 フィリピンに出資して商船大学を設けて、そこで士官の養成をしている。 便宜置籍船の船員はここで充分に賄えるとだと思う。 現在は欧米の1/2-1/3の給料になった日本人の給与ですから、日本人の船員を雇えるようになっているとは思えますが。

 これまでの船員履歴による個人的な見解であるが、昔の話でもある。 必要とあれば、商船高専卒は20歳から士官として雇用できるので船員として雇うには都合が良かった。 船員としての需要の無い現在では過去の教育制度は必要とされないのでしょう。 大手の要求としては現場に精通している陸上勤務員が欲しいだけで、海上職はそれを支える便法になるのでしょうか。 大手の採用の意図は今までの「船乗り」を欲しているのではなく、陸上職へ使うのにベ-スとなる経験を得させようとの目論見でしょう。自社船に日本人船員が必要と考えているのでは無いと思われる。

 これも私見になるが、商船大卒の船員と商船高専卒の船員では専門的知識では違いが無く、海技試験では高専卒の方が合格率が高かったようにさえ思われた。 それでも、人間的・教養的な幅において大卒は違ったものがあるように思えた。 商船大卒と偏差値の高い大学卒との違いでも、会社にとって一般大卒を使いやすいと感じていたのではないかと思われる。 陸上職という名が存在するのかは分かりませんが、今まで有名大学から数名ずつの割り当てで採用してきた新卒採用と海上職採用とはキャリアとノンキャリの格差があるのでしょうね。

 大手と違い中小の会社は、便宜置籍船で外国人を雇用しているので日本人が外航船に仕事を得るのは難しい予感がします。外航船員になるのであれば、一般大学卒で自社養成コ-スに採用されれば、今まででは考えられないくらいの特例コースが用意されている。 小生は国家試験の要求される実際の乗船履歴4年を満たすために、休暇は除かれるので7年くらいの会社履歴を必要とされました。 今度の海上職で採用されれば、海技大学で半年を学び、その後1年の実習をすれば3級の海技士に受験ができる大きな特例がある。 知らぬ間に乗船履歴を重視してきた船員制度が変更になったようです。

 大手2社の採用枠に入れるようなら人なら、当然に受験のプロになっておられるので、大学入試よりは易しいと言われる海技試験も楽勝で合格できるでしょう。( 合格にならねば採用されないようですが ) 昔の制度でも各学校のトップの成績の人しか大手3社には入社出来なかったので5%位の上位の成績の人しか無理でしたから、現在も海上職に入るのは難しいと思われます。

 船乗りに憧れた若いころには紺や白の制服を着てブリッジで当直する姿を夢見たものだが、実際になってみると、作業ズボンにTシャツの姿であったわけで, 動画のように現在に制服姿で当直している船があるのかと驚く。 自分が経験することがなかった大手の世界では当時も制服の姿があったのかと思う。

 
  最後に、現在でも中国に投資を拡大している大丈夫かと思われる企業があるようですが、経営者が安全保障の視点を持つのでなければ日本人船員を雇用する気持ちにはなれないのかと思われる。 ウクライナ戦争の事態が日本に起きなければ良いと思うばかりである。


 
        2023-1-20