第2次世界大戦とは何だったのか

     戦争指導者のたちの謀略と工作  渡辺惣樹 





 この本は表題で読者に想起させるものとは違っているように小生には思える。 著者が云う歴史解釈には「経糸」と「横糸」があり、その「横糸」をここではそれを書いたものである。歴史事件の連鎖とそれを読み解く政治経済思想や人脈のバランスをとる合理的推論を重視してきた著者は言う。

 それゆえに本書では「横糸」の興味深いことが書かれている。  
1. スペイン内戦は共産主義政府と反共産主義政府の戦いであった
2. 第1次世界大戦は局地戦で終わるところをチャ-チルの強引な介入によるものであり、第2次世界大戦は第1次が無ければ怒らなかった。また、日本にとってもトル-マンに原爆の無警告使用を勧めたのはチャ-チルであった。

3. ニュ-デイ-ル政策は世界恐慌からの脱出をめざした進歩主義的政策と賛辞した教育を受けたが、ソビエトの計画経済政策を真似た国家統制的手法であった。 おまけに、米経済の回復は、それによってではなくヨーロッパの戦端が開き、英仏に軍需品供給を始めた1939年9月以降のことである

4.  チャ-チルの娘サラとジョン・ウイナ-との不倫接待。義理の娘のパメラはハリマンと不倫した。2人の米国大物との不倫をチャ-チルは黙認した。その当時1941年の存亡の危機にあった英国は米国の支援継続を勝ち取った。

5.  不倫ネタが多いけれど、メキシコに逃れたトロッキ-は亡命の恩人のデイエゴ・リベラの妻・情熱の画家フリ-ダ・カ-ロと不倫した。 余談だが今のウクライナ戦争で取りざたされるネオコンは極右とされているが本質はトロッキストであるという声が聞こえてくる。

6.  桃色接待の話が続く……. ウエンデル・ウイルキ-(1892-1944)はルーズベルトと大統領選挙を戦った共和党の候補であるが小生には知らない人物であった。選挙中でも対立候補ルーズベルトの国防予算の増額、徴兵制の提案を指示した人物である。選挙後はルーズベルトの支持者として活動した。その彼が1942年に重慶に入った。蒋介石の妻・宋美齢がウイルキ-をハニ-トラップした。 彼女はその後米国に招かれ野蛮な日本の中国侵略を訴えた。

7.  「米国の史家は,盧溝橋事件以降への拡大については近衛の失策というよりも、スタ-リンの工作の見事さに驚きを見せる」 「日華事変はロシアの工作が原因であって、近衛の外交はその結果である」と著者は述べる。 近衛は学生時代に共産主義に傾倒したこともあり、彼の周りには共産党支持者やスパイに取り囲まれていた。

 著者は徹底的に第1次資料を発見してはそれを読み込む歴史家である。 不倫ばかり取り上げているので下に思われるかもしれないがファクト・事実に沿ったものであろう。 最後に
 「好悪の感情は大切にしても、人物を善悪で判断しない」 「結果がどう出るか分からない不透明なときの判断を、結果を知っている者が批判するのは傲慢だ。ましてや善悪の判断などできるものでない」  と述べる。


       2022-3-13